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器をなおす -簡易継ぎ-



日々の暮らしで使うお気に入りの器。使う機会が多いほど、つまりはお気に入りの器であればあるほど、割れたり欠けたり、破損してしまう可能性が高いかもしれません。

もしもの時、泣く泣く処分したり、買い替えたりする以外に「なおして使う」という選択肢があると、そんな時も少しは気が楽になるかもしれませんね。


交点では、日々の暮らしに中で役立ちそうなテーマでもってワークショップ「暮らしにまつわる部活動(暮ら部)」を開催してきました。コーヒーの淹れ方、発酵調味料の醤(ひしお)の仕込みと使い方、そして今回は器をなおす「簡易継ぎ」についての「暮ら部」を開催します。



◯ 簡易継ぎ ≠ 金継ぎ


日本伝統の漆芸の技術を用いた器の修復技術として知られる「金継ぎ」。使う材料が比較的高価だったり、手間と時間がかかったりと、趣味の範囲で気軽に始めるには少々ハードルが高めかもしれません。それに対して、比較的安価に、かける時間も金継ぎに比べると大幅に少なくて済むのが「簡易継ぎ」です。


イメージしやすいように「簡易金継ぎ」と呼ばれることもありますが、金も漆も使わないので正確には「金継ぎ」ではありません。

使う材料から「パテ継ぎ」と呼ばれることもありますが、「暮ら部」では諸々の呼び名の中から「簡易継ぎ」を選ぶことにしました。



◯ 材料について


・パテ

「パテ継ぎ」という呼び方に触れましたが、パテ=エポキシパテという樹脂系のパテ(接着や穴埋めに用いる材料)のことです。割れた器をくっつける接着剤として、破損パーツが部分的にない場合の穴埋めとして使います。


・合成うるし

天然うるし(本うるし)の代わりにつかう材料です。「合成うるし」「新うるし」など「うるし」と言う言葉が入った色々な名前(商品名)で呼ばれますが、うるしではありません。


・真鍮粉

金粉の代わりに装飾のために使う粉です。

蒔絵(装飾の色を乗せたいところに漆のような接着効果のあるものを塗って、その上から金粉などをまぶしかけて、乾燥後に不要な粉を落とす技法)のような使い方もありますが、「暮ら部」では真鍮粉と合成うるしを溶き混ぜて筆で載せるやり方で使います。


これらの材料は安価で手に入りやすく、扱いやすいものなのですが、一方で食品衛生法に合致した材料ではなく、食器の修理に使うことについては意見が分かれるものでもあります。

簡易継ぎの手ほどきを受けた先生からは「そもそも食器の修理に使うことを前提にしていない。なので食品衛生法に照らした検査を通してはいない。検査を通したけどパスできなかったということではない。まず大丈夫だと思うが、心配であれば避けるのがよい」という説明を受けました。


「やめたほうが良い」「自己判断、自己責任」「避けたほうが無難」色々なニュアンスの意見があるようですが、交点としては「捨てるのではなくなおして使う」という選択肢が身近にあることの良さをまず大切にしたいと思います。その上で「リスクになり得ることはなるべく避ける」というバランスをとるために、「直接口を触れる箇所の修理は避ける」「直接ではなくても、例えば煮物の煮汁などの汁気を通じて間接的に修理箇所と口とが触れる使い方は避ける」というような使い方をおすすめしたいと思います。

直した箇所と反対側のふちで飲む、汁気のない乾き物の器として、あるいは食器ではなく小物入れとして、というような使い方でも良いと思います。いずれにしても、壊れたら捨てるだけではあまりにも悲しいと思います。可能な限りふたたび使える道を探してあげたいものです。



◯ 金継ぎの偽物?


安全性の件とはまた別な点で、簡易継ぎの是非が色々と言われることもあるそうです。すなわち、簡易継ぎは金継ぎの偽物なのかどうか。


「簡易金継ぎ」という呼び方をする場合、先にも触れたように正確には「金継ぎ」ではありませんので、その意味で「偽物」になってしまうのかもしれません。なので「パテ継ぎ」という呼び方もあるのだと思いますし、交点の「暮ら部」でも「簡易継ぎ」と呼び方を採用しました。


また、「金継ぎと比べたら、やっぱり金継ぎのほうが美しくて簡易継ぎは見劣りした。だから金継ぎの偽物だ(用いるべき技術には値しない)」というニュアンスの意見も目にしたことがあります。美しいかそうでないかということは、究極はその人それぞれの感性のことではありますが、それでも確かに純金を用いる金継ぎには美しさがありますし、(良い修復がされたものは)美術的価値もプラスされると思います。純金の金継ぎと真鍮粉の簡易継ぎとには、けっこうはっきりとした違いがあります。初めて手ほどきを受けた時に「これは金継ぎか、簡易継ぎか、どっちでしょう?」というクイズを出されたのですが、初めにいくつか例を見せてもらっただけでだいたい判別がすぐつきました。それくらいの違いはあります。

だからといって、簡易継ぎは金継ぎの偽物で、やるに値しない、とは個人的には思いません。それぞれ別物の技だと思っています。日常的な器を気軽になおすには、簡易継ぎは優れた選択肢だと思います。「なおして使う」という選択肢を持てることは良いことだと思います。



以上、ワークショップ開催のための事前の説明が目的ではありますが、「簡易継ぎ」の簡単なご案内でした。

ご参考までに。

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