京都に住んでいたころ、鴨川で過ごす時間が多かった。
やがて「鴨川」としてひとつになる賀茂川や高野川のほうが自宅からは近かったのだけれど、ふたつが合流する出町のデルタより南＝鴨川まで下っていって過ごすことのほうが圧倒的に多かった。
猫の写真を撮ったり、本を読んだり、ちょっとかじったティンホイッスルという笛の練習をしたり、岡田商会のコロッケとコンビニのビールで白昼ふわふわしてみたり。「何をした？」と聞かれたら「あれをした」「これをした」と言うこともできるけど、「何をするでもなく」というのが鴨川で過した時の感覚としては正解な気がする。

今。
日が長い季節になってからは、お店を閉めたあと帰宅の前にちょっと散歩でもしようかと妻と連れ立って歩くことがある。旭川を渡って、木内の前をとおり、お堀の草花や鳥をながめて（近くのホールの愛称にちなんで「ミルハシ」……と勝手に呼んでいる浮体式の遊歩道まで足を伸ばすこともある）、創造館で催しのチェックをして、佐竹小路から通町に帰ってくるコースが多い。あるいはその逆回り。

旭川を渡りはするけれど川沿いの散歩というわけではないし、鴨川での過ごし方とは違うのだけれど、「何をするでもなく」という過ごし方はとても近い気がする。
鴨川のような心地の川が身近にないのは残念に思うこともあるけれど（旭川はその類の川ではないし、雄物川はこの文脈ではいささか雄大すぎる気がするし、ちょっと離れている）、「何をするでもなく」過ごせる環境はここにもあると思うと、まんざらでもない。

この夏は、かねてからの小さな野望「お堀を眺めながら夕涼みのワイン」を決行できた。

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ただ景色流れるままにフラヌール我もまたこの街の景色に

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